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ねころもち七夕寄席 第二夜 「猫ヶ洞の化け猫」猫魯餅亭黒縞乃嬢

♪ドドドドン テケトンテケトンテケテケテン テケトトテケトコテコロコテン テケトントンっ♪

えーーっ、名古屋には“猫”の名前が付く地名があります。その地名は「猫ヶ洞」といいまして、ご存知の方はご存知でしょうが、ご存知でない方はご存知でないと……。当たり前のことでございますがね。また、大須の方には「猫とび横丁」というものもありましたが、こちらのほうは地名ではなくて俗称とでもいうものでしょうね。

これからお話するのは「猫ヶ洞」のほうです。ちょっと怖い噺なので心の臓が弱い方などはくれぐれもご注意ください。

 
むかしむかし、この地方にある荘司が住んでいました。荘司には年老いた母親がいましたが、体が弱いために寝たり起きたりを繰り返していたそうです。ある日、荘司が寺詣りをして帰ってくると、その老母が急に元気になり、魚を好んで食べて、さらには口数も多くなりました。荘司はこれはきっとご利益があったものだとたいへん喜こんだものでした。

荘司は元気になった老母には、ご隠居さまとしてその身の回りの世話と家の下働きをさせるため、近隣の里からそのえという若い娘を雇い入れることにしました。ところがご隠居さまときたら、寺詣りに行けば行ったで石段をとっとと上ってしまうし、ちょっと目を離すとすぐに姿を隠してしまい、大騒ぎになることも一度や二度ではなかったそうです。それに魚の食べ方などもあざやかなもので、これが七十過ぎの人の手つきかと思うほどで、みんなは感心するばかりでした。

それから幾日が過ぎた真夜中のこと。台所の方からする物音で目を覚ましたそのえが覗いてみると、ご隠居さまが背を見せて何か食べているようでした。そのえは声をかけようとしましたが、思わず震え上がってしまいました。そのえの気配を感じてこちらを振り返ったご隠居さまの形相があまりにもすごかったからです。薄暗い台所の中でも瞳は金色に輝き、口のまわりにはべっとりと血のようなものが付いているのが分かったからでした。逃げ出そうにも動けないそのえに、ご隠居さまは猫なで声で「早くむこうへ行きなされ。私が今夜、ここでしていたことは誰にも話すでニャいぞ。もし話したら、その時はおまえの死ぬときだからニャァーっ」と語りかけたました。その声に無気味なものを感じながら部屋に戻ったそのえは見てはならないものを見てしまったと、その夜は眠られなかったそうです。

そしてまた幾らか月日が流れ、その年の盆がやってきました。そのえは盆の休みをもらって実家へ戻ろうとしたその時、ご隠居さまが呼びとめてそのえにこういいました。
「わかっとるじゃろうニャァーっ」
そのえの記憶の中に、あの夜のご隠居さまの怖い顔とそのことを話してはいけないと言われたときのことが蘇ってきました。強引にそれらの事を振り払って大急ぎで実家へと戻っていきました。実家に戻っても、のんびりしていられる心境ではありません。何をしていても今朝のご隠居さまのことばが蘇ってきたからです。そのえの両親は、そんな態度を察してか、そのえに問い詰めました。そのえは初めは困っていたものの、結局これまでの経緯を両親に話してしまいました。そして話し終わった途端、そのえの耳の奥に「フギャァォーーーっ」と猫に似た叫び声が響いたそうです。

あくる日、そのえは先祖の墓参りに出かけました。墓の周りの夏草を刈るために鎌を腰にさげ、そして熊手も待っていきました。うっそうと伸びた夏草を刈り終え、次に墓石を丁寧に洗い清め、その後に花を供えました。そして手を合わせてようとしたその時でした。背後に何物かの気配を感じて後ろを振り向くと、今まさに大きな猫が飛びかかろうとするところでした。そのえは思わず腰の鎌を抜いて横に振りました。「ギャーオ」という叫び声がしたのと、そのえの肌に火のような痛みが走ったのはほとんど同時のことでした。恐怖から鎌を振り回し続けましたが、猫は一声叫んでかたわらの薮の中に姿を消していってしまいました。

盆が終わり、そのえは里から荘司の家へ帰ってきました。しかし荘司をはじめみんなが不思議がったのは、そのえの顔や手にあるたくさんの傷のことでした。そのえは里での出来ごとをありのままに話すと、その場にいた全員が驚きの声をあげました。それもそのはず。そのえが怪我をしたと同じ日に、荘司の家でも不思議な怪我人が出たからでした。その日はご隠居さまが女中を一人連れて寺詣りに出かけ、なぜだか女中を寺の門前に待たせておいて、ひとりでお堂に入って長いこと祈っていたそうです。そのうちに寺男が門前の女中の叫び声を聞いてあわてて駆けつけると、お堂の階段の下でご隠居さまが転がって苦しんでいました。「たったいま、お堂の階段から落ちて怪我をした」と言って、だらだらと真っ赤な血の流れてる足を女中は大変なことになったと思い、早速寺男を荘司の屋敷に使いにやって、ご隠居さまを家へ連れ帰ったという出来事でした。

そのえの話をじっと腕組みをして聞いていた荘司は、やおら立ち上がると奥の部屋へ行き、母親の様子をうかがいました。考えてみると、老母が十数年も飼っていた猫が、ここ一年ほどの間に姿を消している……。猫は十年以上経ったり、目方が一貫目(約四キログラム)以上になると化けること。小さい時は可愛がられていたのに、老いると粗雑に扱われて飼い主にたたること。そして気力の乏しくなった老婆のスキにつけこんで、そのまま老女になりすますということも聞いたことがあった荘司でしたから、「もしかしたら、あの猫が母親を食い殺して、母に化けているのではなかろうか」と疑わしく思いました。

荘司は家人の腕利きのものを呼び寄せると、刀を与えて苦しむ老母を刺させました。その途端、「ギャーオ」と悲鳴があがったと思うと、まっ黒な影が庭先に飛び出し、あっというまに闇の中へと姿を消してしまいました。みんなは、地面に残された血の痕を頼りにその後をたどることにしました。そして着いた所は、木立の間に口を開けている洞穴でした。たいまつを差し入れると、洞穴の中には血まみれになった大きな猫と、その周りに子猫が十数匹寄り添っていったそうです。可愛そうとは思った荘司でしたが、いずれ子猫たちも人の心を誑(たぶら)かすと考え、猫たちはすべて殺され、その洞穴も埋められてしまいました。その事件があってから、村人たちはそのあたり一帯を誰からとなく猫ヶ洞というようになったそうです。

今も地元の古老たちの間で伝わっているという、「猫ヶ洞」の名の由来のお話でした。



【解説】
「猫ヶ洞」という地名の由来については、名古屋市のサイトの中に書かれている「千種区の町名の由来」によりますと、

この付近の山を「兼子(かねこ)山」と呼んでいましたが、それがなまって「ネコガボラ」となったという説と、中国の猫堂にちなんで命名したという説があります。

とあります。また、書籍によりますと「兼子」が「金子」になっていたりもしますが、いずれにしても「化け猫」や「猫又」からその地名が付いたとは記されていません。ただ地元に伝わる民話としては、この話のほかによく似た話が存在しています。現在の猫ヶ洞池を含む広大な緑地は平和公園と整備され、名古屋市の一大霊園や憩いの場や施設があります。その一角には動物愛護センターも建っています。

【参考書籍】
『おかあさんが集めたなごやの民話』小島勝彦・編('75 ふるさとを訪ね民話を読む会)


  1. 2005/07/06(水) 17:18:00|
  2. ニャン写真っ≦⌒▽⌒≧З
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:14
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コメント

う~ん、悲しいなあ。
病弱な老女を助けるために猫が助力したというふうにとらえると、後半で人間のやっていることの方が残酷に思えてしまいます。映画「ペットセメタリー」はごらんになりました? あの中で描かれる歪んだ愛情にも共通するものを感じます。
この手の因縁話を読むたびに思うことは、落語の怪談ものにしてもそうですが、どうしても人間中心の解釈になってしまって、その対象になっている動物が、下等で愛情のないものと決めつけられがちな傾向があると思うんです。この話の猫だって、お婆さんを延命させるためにとった行動が、思わぬ悲劇を生んでしまったのではないかと解釈します。
歳取って邪険にされたからとり殺して成り代わったというには、根拠が希薄な気がして(笑)。
  1. 2005/07/06(水) 17:52:00 |
  2. URL |
  3. wolf_japan #79D/WHSg
  4. [ 編集]

福島の磐梯山に「猫魔岳」というところがあって、そこでも似た様な言い伝えがあります。
えっと、どこで見たんだっけかな~?
現在は「猫魔スキー場」があって、そこのレストランには「ねこまんま定食」があり、確かごはんとお味噌汁という名前そのままのモノがあります。
  1. 2005/07/06(水) 21:07:00 |
  2. URL |
  3. さぶろう #79D/WHSg
  4. [ 編集]

毎度の語り口,読ませますねぇ。最後の注釈もnekoromochi さんらしくて良いです。
 民話や奇譚では,猫は悪者になることが多いですね。神秘的で,人間には分からない秘密を持っているように見えたり,非常にある意味人間くさい怜悧さを感じたりする動物だからではないかと思います。
 私は,ゲゲゲの鬼太郎の一話,猫がお爺さんに化けて,自分の飼い主である娘を魔物から守るために,汚れとなる痣を娘の顔に着けるという話が好きです。というわけで,TBしちゃいました。
  1. 2005/07/06(水) 21:37:00 |
  2. URL |
  3. complex_cat #79D/WHSg
  4. [ 編集]

ウニャニャっ、オオカミさんっ≦⌒ω⌒≧З
確かにこの手の話の多くは、残酷な側面もありますよね。また、伝承されてきた話の部類になるとになると、時間の経過に比例して内容や設定も変わっていきます。小さい頃に聞いた童話でもよくよく考えれば、ものすごく残酷っだったりしますからね。
この民話についても様々なヴァージョンがあり、読み比べると時にまったく違うエンディングになっていました。例えば、老母は既に食べられていて化け猫が老母に化けたというもの。娘が里帰りしていないものなどです。これらのヴァージョンは、たぶんどれも正しくて、どれも間違っている事でしょう。オリジナルがきちんと存在しているものであればそうそう変わるものではないでしょうが、編者などのヒアリングによって集めた民話や伝説ってそうして変化していくものだと捉えていますから。
「ペットセメタリー」は公開時に観ました。確かに歪んだ愛情により、命の尊さを蔑ろにしている印象でしたが、もっと深い心の中へ踏み込むと、本来の人間の持っている本質があのような愚かな行為をさせたのだと感じましたけれどねっ≦⌒ω⌒≧З
  1. 2005/07/07(木) 04:24:00 |
  2. URL |
  3. nekoromochi #79D/WHSg
  4. [ 編集]

ウニャァー、さぶろうさんっ≦⌒▽⌒≧З
「猫魔岳」ねぇーっ、いかにもっていう山の名前ですよね。
「ねこまんま定食」ねぇーっ、ごはんとお味噌汁のほかにオカカとアジの
干物もつけてほしいーーっ≦ ̄□ ̄;≧З
  1. 2005/07/07(木) 04:30:00 |
  2. URL |
  3. nekoromochi #79D/WHSg
  4. [ 編集]

ウニャォーっ、complex_catさんっ≦⌒◇⌒≧З
そうなんですよねぇーっ。
陰な生き物ということで悪玉にされたり、祟られたり、化けたりとね。
人間くささというのは、大昔から常に生活の中にいて、身近な存在になっていたということもいえますよね。
「ゲゲゲの鬼太郎」はもう随分読み返していないなぁ……。テレビのアニメで放映してからは、何だか縁遠くなってしまった……っ≦ ̄□ ̄;≧З
あっ、そういえばお隣の岐阜県の博物館では「大(Oh!)水木しげる展」なるものを開催しているとか。観にいきたいのですけれどねぇーっ♪
◆「岐阜市歴史博物館」
http://www.city.gifu.gifu.jp/event/rekishi/mizuki/
  1. 2005/07/07(木) 04:48:00 |
  2. URL |
  3. nekoromochi #79D/WHSg
  4. [ 編集]

昔話って、結構残酷な結末って多いですよね。
思わず息を飲んで読んでしまいました。
目方が4キロ越すと化ける・・・?ムーンは4キロ以上あるから、可愛がってあげないと呪われるから・・・(^_^;)
  1. 2005/07/07(木) 14:34:00 |
  2. URL |
  3. kiyokime #79D/WHSg
  4. [ 編集]

そのえのおしゃべりめ~~~~( ̄△ ̄#)
夜更けに口の周りをベタベタにしながらチョコを食ってる所を見つかってしまったら、口封じのために、チョコをひとかけ分けてあげましょう、と云う、教訓なのだな。ふむふむ。
  1. 2005/07/07(木) 16:16:00 |
  2. URL |
  3. sikes-cassandra #79D/WHSg
  4. [ 編集]

ウニャニャっ、kiyokimeさんっ≦⌒◇⌒≧З
民話とか古い書物に出てくる数値は、現代に当てはまらないことも
多いですよ。平均年齢がその代表なようにねっ♪
> 可愛がってあげないと呪われるから・・・
それよりも、食い物の恨みが……。
あっ、メロンの件は恨んでなかったんだっけっ、ムーンちゃんっ≦ ̄□ ̄;≧З
  1. 2005/07/08(金) 00:08:00 |
  2. URL |
  3. nekoromochi #79D/WHSg
  4. [ 編集]

フニャラァーっ、sikes-cassandraさんっ≦ ̄□ ̄;≧З
そうなのかぁーーーーっ?
この話の教訓とするところはっ≦ ̄δ ̄≧З
  1. 2005/07/08(金) 00:10:00 |
  2. URL |
  3. nekoromochi #79D/WHSg
  4. [ 編集]

 寄席とあったので落語かなと読み始めたものの、だんだん、ちょっと変かも?……、!やっぱりだった……。正直ドキンとしたんですよ。怪談だったんですねー、怖かった……。{{(>_<)}}
 今なんか、1貫目を超える猫なんて、ザラですよね。みんな化け猫になったら、怖いヨー。
 それにしても、何でそんなに悪者にされるかなあ、猫って。
 私は、猫ほど、単純でノー天気な動物もいないくらいだと思ってるんだけど。(^^ゞ
 ワンちゃんは、もともと攻撃する性格を持っていて、歯にもかなり威力がありますが、猫は口も小さく弱々しくて、人間がコワイと思ったら、攻撃なんてしないで、さっさと逃げ道を探して逃げちゃいますよね。
 ただし! にーママさんとこのミー君みたいに、物陰から飛び出して人間の脚を襲う猫もいますけど。
 あれは単に遊んでいるだけだし……。(*^^*ゞ 
 やっぱりニャンはカワイイなっ♪
  1. 2005/07/09(土) 00:17:00 |
  2. URL |
  3. すずめ #79D/WHSg
  4. [ 編集]

ウニャニャのニャァーっ、すずめさんっ≦⌒▽⌒≧З
だから、初めのほうに
「ちょっと怖い噺なので心の臓が弱い方などは・・・」
と断ってるぢゃあーーりませんかぁーーっ≦ ̄δ ̄≧З
昔は、今のように栄養のあるものをたらふく食べてっというようなことは稀だったのかもね。稀であるがゆえに、そうした奇奇怪怪の話に出てくるようになったのではないかな?
それに、夜行性で夜目がきくことや、目が光るっと言ったことも不気味がられる理由かもねっ≦⌒ω⌒≧З
にいママさんちの“ミー”くんは、生まれついての「猫又」かもっ≦⌒m⌒≧З
  1. 2005/07/09(土) 03:58:00 |
  2. URL |
  3. nekoromochi #79D/WHSg
  4. [ 編集]

拙エントリでこのエントリに触れて、Tbackしたのですが、どうも弾かれてしまってできないので、コメントに書きます。
http://omedarui.exblog.jp/3585149/
  1. 2005/10/07(金) 10:40:00 |
  2. URL |
  3. wolf_japan #79D/WHSg
  4. [ 編集]

フニョっ、オオカミさんっ≦ ̄δ ̄≧З
どうしてでしょうか?
  1. 2005/10/07(金) 14:54:00 |
  2. URL |
  3. nekoromochi #79D/WHSg
  4. [ 編集]

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